今回は非常に多くの患者さんが悩まれている「ニキビ(尋常性ざ瘡:じんじょうせいざそう)」についてお話しします。
「青春のシンボルだから放っておけば治る」
「市販薬を塗っているけど、繰り返す」
もしそう思われているなら、その認識は少し古いかもしれません。
医学的に、ニキビは「慢性炎症性疾患」と定義されており、放置すれば「ニキビ痕(あと)」という一生残る傷跡になりかねない病気です。
当院では、日本皮膚科学会の「尋常性ざ瘡・酒さ診療ガイドライン 2023」に基づき、一時的に治すだけでなく「再発させない肌を作る」ことを目標とした治療を行っています。
1. なぜニキビはできるのか?(4つの原因)
ニキビは単に顔が汚れているからできるわけではありません。皮膚の中で以下の4つのことが連鎖的に起こることで発症します。
- 皮脂の過剰分泌: ホルモンバランスなどの影響で、皮脂(アブラ)が増える。
- 毛穴の詰まり(角化異常): 出口が塞がり、皮脂がたまる。これが「面皰(コメド)」と呼ばれるニキビの赤ちゃんです。
- アクネ菌の増殖: 詰まった毛穴の中で、アクネ菌(C. acnes)が増える。
- 炎症: 菌に対抗しようと免疫が働き、赤く腫れたり膿を持ったりする。
最新の研究では、目に見えるニキビができる前の段階ですでに微細な炎症が起きていることが分かっています。つまり、「赤くなってから薬を塗る」のでは遅いのです。
2. 「ニキビだと思ったら違う病気?」診断の重要性
「ニキビが全然治らない」といって来院される方の中には、実はニキビではない別の病気であるケースが少なくありません。間違った治療(例えば、抗生物質の漫然とした使用)は、かえって症状を悪化させることがあります。
ニキビと間違えやすい病気(鑑別診断)
- 酒さ(しゅさ):
いわゆる「赤ら顔」です。顔の中心が赤くなり、ニキビのようなブツブツが出ますが、ニキビ特有の「コメド(毛穴の詰まり)」がありません。 - マラセチア毛包炎:
アクネ菌ではなく「カビ(真菌)」の一種が原因です。背中や胸にできやすく、痒みが強いのが特徴です。通常のニキビの薬(抗生物質)を使うと、菌のバランスが崩れて逆に悪化します。 - 毛包虫症(ニキビダニ):
誰の皮膚にもいるダニですが、増えすぎると炎症を起こします。
当院では、視診だけでなく、必要に応じて顕微鏡検査などを行い、論理的に「何が原因か」を見極めてから治療を開始します。
3. 保険診療での「攻め」の治療(急性期)
今ある赤いニキビや膿を持ったニキビを、速やかに鎮める治療です。
ガイドラインでは、以下の薬が推奨度A(強く推奨)とされています。
① アダパレン(ディフェリンゲルなど)
毛穴の詰まりを取り除く薬です。目に見えない極小のニキビ予備軍にも効きます。
② 過酸化ベンゾイル(ベピオゲルなど)
強力な殺菌作用と、ピーリング作用(毛穴の詰まりを取る)を併せ持ちます。抗生物質と違って「耐性菌(薬が効かない菌)」を作らないのが最大の特徴です。
③ 配合剤(エピデュオ、デュアックなど)
上記の成分や抗生物質を組み合わせた薬です。単剤で使うよりも効果が高く、中等症以上のニキビにおける第一選択となります。
④ 内服抗生物質(飲み薬)
腫れがひどい場合は、一時的に抗生物質(ビブラマイシン、ミノマイシンなど)を飲みます。
【重要】 抗生物質はずっと飲み続けるものではありません。耐性菌を防ぐため、原則3ヶ月以内を目安に、良くなったら塗り薬だけによる維持療法へ切り替えます。
4. 最も重要なのは「守り」の治療(維持療法)
ここが、治療が成功するかどうかの分かれ道です。
「赤みが引いたから、薬を塗るのをやめた。そうしたらまたできた」
これは当然の結果です。なぜなら、肌の下には目に見えない**「微小面皰(マイクロコメド)」**というニキビの種が潜んでいるからです。
治療のゴールは「新しいニキビができない肌」
赤いニキビが治った後も、アダパレンや過酸化ベンゾイルなどの塗り薬を最低でも3〜6ヶ月、できれば1年以上継続することをお勧めしています。
これを「維持療法」と呼びます。
- 急性期: 炎症を火消しする治療
- 維持期: 毛穴を詰まらせないようにして、再発を防ぐ治療
この維持療法を続けることで、ニキビができる頻度が減り、最終的には薬を使わなくても良い状態を目指せます。
5. 生活習慣とスキンケアの嘘・ホント
診察室でよく聞かれる質問について、科学的根拠(エビデンス)に基づいてお答えします。
Q. チョコレートを食べるとニキビができる?
A. 直接的な原因とは証明されていません。
科学的には、チョコレートそのものよりも、糖質・脂質の摂りすぎや、ストレス、睡眠不足の方が影響大です。「チョコを食べたからニキビができた」と自分を責める必要はありません。バランスの良い食事を心がけましょう。
Q. 洗顔は1日何回もした方がいい?
A. 1日1-2回、優しく洗えば十分です。
洗いすぎ(過度な洗顔)やゴシゴシ擦る行為は、肌のバリア機能を壊して乾燥を招き、かえってニキビを悪化させます。
Q. ニキビ肌に保湿は必要?
A. 必要です。特に治療中は必須です。
ニキビの塗り薬(アダパレンや過酸化ベンゾイル)は、副作用として乾燥やヒリヒリ感が出やすいです。治療を続けるためにも、ノンコメドジェニック(ニキビができにくい処方)の保湿剤でしっかりと肌を守ってください。

最後に:早期治療で「ニキビ痕」を防ごう
一度深く凹んでしまった「ニキビ痕(クレーター)」を、保険診療の塗り薬だけで元通りにするのは非常に困難です。だからこそ、痕になる前に治すことが何より重要です。
はれまちクリニックでは、皆様の肌の状態に合わせた薬の選び方、塗り方、副作用への対策まで丁寧に指導いたします。
「たかがニキビ」と諦めず、医学的なアプローチで一緒に治していきましょう。
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