症例報告 / J Dermatol 2024
帯状疱疹が左右両側に出た、ごく稀な症例
帯状疱疹は通常、体の片側に帯状に出ます。
今回は金沢医科大学皮膚科で経験し、国際誌に報告した症例についてご説明します。ちょっと難しい内容ですが、興味がある方はぜひ読んでみてください。
本例では免疫が正常な85歳女性に帯状疱疹が① 左大腿 先行発症 ② 右胸部 翌日発症しました。さらに、後から出た発疹では迅速抗原検査が陰性となりました。
帯状疱疹は通常、正中線(点線)を越えないはずですが、本例は正中線をまたぎ左右両側に発症しました。
帯状疱疹とは
水痘・帯状疱疹ウイルスは、水ぼうそうの治癒後も神経節に潜伏し、加齢や免疫低下で再活性化したものが帯状疱疹です。
発疹は、潜伏していた神経が支配する皮膚の範囲(皮膚分節)に沿って、体の片側に帯状に出ます。痛みが発疹に先行することが多く、原則として正中線を越えません。
両側性という稀な型
離れた複数の神経で同時に再活性化したものを複発性帯状疱疹と呼びます。
これは帯状疱疹患者の約0.1%。両側性はさらに稀とされます。
多くは免疫低下例(HIV、悪性腫瘍、ステロイド使用など)に生じるとされる。本例は免疫が正常で両側性であり、二重に稀な点が特徴です。
85歳女性
左大腿に有痛性の紅斑・水疱が出現し、その翌日に右胸部にも同様の発疹を認めた。正中線をまたぐ両側性。帯状疱疹の既往はなく、免疫を抑制する基礎疾患や薬剤もなかった。
後発病変で迅速検査が陰性
帯状疱疹は迅速抗原検査で短時間に診断できます。先行した左大腿は陽性でしたが、後から出た右胸部は陰性。別日に別の医師が再検査しても陰性でした。
同一患者・同一疾患でありながら、後発病変では迅速検査のみが陰性。
右胸部の皮膚生検を実施し、追加検査を行った。結果は以下のとおり。
Tzanck試験 陽性組織にウイルス封入体免疫染色 陽性PCR 陽性迅速検査のみ 陰性
迅速検査以外はすべて陽性で、帯状疱疹と確定しました。
偽陰性の理由
後発部位では免疫応答が先行して活性化していた可能性がある。過去の報告でも、後発病変ではサイトカイン(インターフェロンγ、インターロイキンなど)の発現が示されている。
この免疫応答がウイルスの増殖を抑え、検査が検出する抗原量を低下させたと考えられる。迅速抗原検査は一定量の抗原がないと陽性化しないが、PCRは高感度のため微量でも検出できる。抗原量の低下が偽陰性の原因と推定される。
臨床的な示唆
POINT
- 迅速抗原検査が陰性でも帯状疱疹は否定できない。とくに複数部位・後発病変では注意を要する。
- 臨床的に疑わしい場合は、生検やPCRで確認する。
- 治療は通常の帯状疱疹と同様。本例はアシクロビルで軽快し、6か月後も良好であった。
- 片側性の有痛性発疹などがあれば、早めに皮膚科を受診する。
「帯状疱疹かな?」と思ったら
本ページは一般の方向けに、医学論文の内容をわかりやすく解説したものです。個別の診断・治療に代わるものではありません。症状については医療機関にご相談ください。掲載写真は使用せず、図はすべて解説用に作成した模式図です。

<引用文献>
Concise communication
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