草刈りや畑仕事、家庭菜園、登山やキャンプ、そしてペットの散歩。上越エリアの暮らしには、マダニと出会う場面が意外とたくさんあります。
ふと皮膚に黒い粒のようなものがくっついていて、よく見ると虫だった——。そんなとき、多くの方が反射的に「指でつまんで引っ張る」「ピンセットで取る」をやってしまいます。ですが、これは避けていただきたい対応です。
この記事では、マダニに咬まれたときになぜ自分で取ってはいけないのか、正しい対処法、そしてマダニが運ぶ感染症について、皮膚科の立場からわかりやすく解説します。
マダニに咬まれても、絶対に自分で引っ張らないでください
マダニは、いったん皮膚に咬みつくと口器(こうき=口の部分)をしっかり差し込み、数日かけて吸血します。この状態で無理に引っ張ると、口器だけが皮膚の中に残ってしまうことがよくあります。
口器が残ると、こんなトラブルにつながります。
- 残った口器が刺激となり、炎症や化膿、しこりを起こすことがある
- 取り除くために、後から皮膚を小さく切開する処置が必要になることがある
- 傷が長引いたり、痕(あと)が残りやすくなったりする
体を強くつまんだり押しつぶしたりするのも危険です。マダニの体内にいる病原体を、咬まれた部分に逆流させてしまう可能性があるためです。
やってはいけないマダニの「NG除去法」
昔から「こうやって取るといい」と言われている方法の中には、かえって危険なものが少なくありません。次のような方法は行わないでください。
- 指やピンセットで無理に引っ張る
- マッチやライターの火、熱で炙る
- マニキュア・除光液・ガソリン・灯油などを塗る
- ワセリンやアルコールを塗って窒息させようとする
- マダニの体を指でつまんで潰す
これらはいずれも、マダニが唾液や消化物(病原体を含むことがあります)を体内に吐き戻すきっかけとなり、感染のリスクをむしろ高めると考えられています。「弱らせてから取る」発想の民間療法ほど、危険だとお考えください。
マダニが運ぶ「軽く見てはいけない」感染症
マダニが怖いのは、咬まれること自体より、媒介する感染症です。代表的なものを挙げます。
重症熱性血小板減少症候群(SFTS)
ウイルスを持つマダニに咬まれて感染し、6日〜2週間ほどの潜伏期間のあと、発熱や消化器症状(食欲低下・吐き気・嘔吐・下痢など)が現れます。重症化すると命に関わることがあり、致死率はおよそ10〜30%とされる、油断できない感染症です。
かつては西日本中心の病気とされていましたが、近年は状況が変わっています。2025年は全国の報告数が過去最多となり、秋田県や北海道など、これまで報告のなかった東日本でも感染例が確認されました。新潟県を含む東日本にお住まいの方にとっても、もはや「遠い地域の話」ではありません。
さらに、SFTSは人だけでなく犬や猫などのペットも感染し、感染した動物の体液を介して飼い主に感染した例も報告されています。屋外に出る猫や、散歩中の犬がマダニに咬まれるケースにも注意が必要です。
日本紅斑熱
リケッチアという病原体による感染症です。2〜8日の潜伏期間ののち、高熱・発疹・咬まれた跡(刺し口)が現れるのが特徴で、こちらも重症化することがあります。近年発症地域が拡大しています。新潟県でも報告があります。
ライム病ほか
咬まれた部位を中心に輪のように広がる赤みから始まり、放置すると関節や神経の症状を起こすことがあります。
いずれの感染症も、マダニの付着時間が長いほどリスクが上がると考えられています。だからこそ、見つけたら早く、そして正しく取り除くことが大切なのです。過去に新潟県でも報告があります。
皮膚科での「正しい対処法」
では、咬まれているのを見つけたらどうすればよいか。手順はとてもシンプルです。
- 自分で取ろうとせず、できるだけ早く皮膚科を受診する
- 専用の器具を使い、口器を含めてマダニを丸ごと安全に除去する
- 口器の残存が疑われたら、局所麻酔下で切除します。
- 必要に応じて感染症への注意点や予防的な対応を説明します
除去して終わりではありません。マダニに咬まれたあとは、数週間は体調の変化に気をつけてください。発熱や倦怠感、発疹などが出た場合は、すぐに医療機関を受診し、「マダニに咬まれたこと」「ペットや動物と接触したこと」を必ず医師に伝えましょう。診断の大きな手がかりになります。
マダニに咬まれないための予防
そもそも咬まれないことが一番の対策です。屋外で草むらや藪に入るときは、次を意識してください。
- 長袖・長ズボンで肌の露出を減らし、シャツの裾はズボンに、ズボンの裾は靴下や長靴の中に入れる
- マダニを見つけやすい明るい色の服を選ぶ
- 首にタオルを巻く、帽子をかぶる
- ディートやイカリジンを含む虫よけ剤を活用する(完全には防げませんが、付着を減らせます)
- 帰宅後は、衣類や体(特に首・耳の後ろ・わきの下・足の付け根など)にマダニがついていないか確認する
ペットを飼っている方は、動物病院でマダニ予防薬について相談し、散歩のあとは体表をチェックしてあげてください。ペットにマダニがついていても、人と同じく無理に取らず、動物病院で取ってもらいましょう。
上越市で「マダニに咬まれたかも」と思ったら
はれまちクリニックの皮膚科では、マダニの除去と、その後のケア・経過の見守りに対応しています。「自分で取ってしまったが口器が残っているかもしれない」というご相談も歓迎です。
慌てて自分で対処する前に、まずはご相談ください。
まとめ
最後に、いちばん大切なことをもう一度。
マダニは「医療機関で丸ごと安全に取る」が正解です。
自己流で取ろうとすると、口器が残ったり、感染のリスクを高めたりすることがあります。マダニを見つけたら、無理に取らず、できるだけ早く皮膚科を受診してください。
※この記事は一般の方向けの啓発を目的とした情報提供であり、個別の診断・治療に代わるものではありません。流行状況や報告数は厚生労働省・国立健康危機管理研究機構などの公表情報に基づいています。症状や対応について不安がある場合は、医療機関にご相談ください。
監修:はれまちクリニック 皮膚科(皮膚科専門医)

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