「先生、だいぶ髪が生え揃ったので、そろそろ薬を卒業してもいいですか?」
AGA治療が順調に進むと、多くの患者様からこの質問をいただきます。
お気持ちは痛いほど分かりますが、医学的な回答は「No(やめてはいけません)」です。
AGA治療薬は、風邪薬のように「治ったら終わり」ではなく、高血圧の薬のように「数値をコントロールし続ける」タイプの治療だからです。
今回は、もし薬をやめたらどうなるのか?そして、薬の種類(フィナステリドとデュタステリド)による「体から抜ける期間」の違いについて解説します。
1. 薬をやめると「治療前」より薄くなる?
AGA治療薬は、脱毛の原因物質(DHT)をブロックする「堤防」のような役割をしています。
薬をやめるということは、この堤防を撤去するのと同じです。
では、やめるとどうなるでしょうか?
単に「治療前の状態」に戻るだけではありません。
「もし治療していなかったら進行していたはずの薄さ」まで、一気に追いついて抜けてしまいます。
これを医学的に「キャッチアップ・ヘアロス(追いつき脱毛)」と呼びます。
一般的に、薬をやめてから3〜4ヶ月で抜け毛が増え始め、1年後には治療の貯金が完全に消滅してしまいます。
2. 「フィナステリド」と「デュタステリド」の決定的な違い
現在、AGA治療の主力となっている2つの薬ですが、「体の中に残る期間」に違いがあります。
- フィナステリド: 体から抜けるのが「早い」
- 飲むのをやめると、約2週間で薬の効果が切れ、元の状態に戻ります。
- デュタステリド: 体から抜けるのが「遅い」
- 一度体に入ると長く留まる性質があり、やめた後も数ヶ月間は体内に残ります。
この「期間の違い」は、日常生活のルールに大きく関わってきます。
3. 「献血」と「妊活」の注意点
AGA治療薬を飲んでいる間は、献血ができません。
また、これから妊活を考える際、念のために休薬を希望される方もいます。
その際、薬の種類によっていつからやめればいいかが全く異なります。
| 薬の種類 | 献血・妊活のための休薬期間 |
| フィナステリド | 中止してから「1ヶ月」あければOK |
| デュタステリド | 中止してから「6ヶ月」あける必要あり |
デュタステリドは効果が強力ですが、体から抜けるのに半年もかかります。
「来月結婚式だから献血したい」「そろそろ子供が欲しい」と思っても、デュタステリドだとすぐには対応できません。

まとめ:ライフプランに合わせたお薬選びを
AGA治療は「継続」が命ですが、結婚や子作りなど、人生のステージに合わせて一時的に中断したり、薬を変更したりすることは可能です。
- 「とりあえず生やしたいけど、将来の予定は未定」なら、小回りのきくフィナステリド。
- 「とにかく効果重視で、当分子供の予定はない」なら、強力なデュタステリド。
このように、ご自身のライフプランに合わせて薬を選ぶことが大切です。
自己判断でやめてしまう前に、まずは一度ご相談ください。
文献
Richard V. Clark, David J. Hermann, Glenn R. Cunningham, Timothy H. Wilson, Betsy B. Morrill, Stuart Hobbs, Marked Suppression of Dihydrotestosterone in Men with Benign Prostatic Hyperplasia by Dutasteride, a Dual 5α-Reductase Inhibitor, The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism, Volume 89, Issue 5, 1 May 2004, Pages 2179–2184

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